2014年3月28日金曜日

日本に生きること




春。多くの動物が命を生み、育む季節です。

最近読んだ本でとても印象に残る内容がありました。

一冊目は宮本常一著「忘れられた日本人」。

宮本常一(1907-1981)は生涯に渡り日本各地でフィールドワークを行い、
農村に住む人々やその生活の膨大な記録を残した人です。

柳田邦男などの民俗学者と異なるのは、当時ほとんど無視されていた
漂泊民や被差別民、性などの問題を重視したことです。

「忘れられた日本人」にはフィールドワークの中で出会った人々の様子や
老翁、盲目の乞食老人から伝え聞いた話などが収められています。
歴史の教科書には決して載らない日本人の姿です。でもその農民たちが
日本固有の文化の多くを形成してきたことを考えると、これこそ日本の歴史
なのではないかと思います。

詳しく書くと長くなってしまうので、簡単に印象に残ったことをまとめると、

・村のしきたりや伝説はすべて口頭で伝承されてきたが文字文化の発達に
よってようやく情報や記録が外まで伝わるようになったこと

・田植えなどの作業のときには人々が田植え歌などを歌い、日常生活でも
歌や昔話、誰かの経験を非常に大切にしていたこと

・農民の男女ともに性的な話を日常的にしていたこと。性的なことを非常に
大切にしていたこと

です。

口で伝えることのなくなった私たちの言葉には、言霊などの見えない力や
物語る力が少なくなってしまったように思います。
また、工業化や西欧文化の流入で物事を理性的・経済的に考えるように
なったことで、性的なことは悪い、というネガティブなイメージを
持つようになり、日本人が本来持っていた「生命力」や「本能」というか、
「自然のおおらかさ」というものは失われてしまったのだと思います。

無名の人々が無数に蓄えていた「忘れられた日本人」の姿を記録した
宮本常一。こどもたちに伝えたいことがまたひとつ増えました。

もう一冊は自然分娩で有名な吉村正先生の
「いのちのためにいのちをかけよ」。
この本は数年前に読んでいたのですが、民藝の知識が増えたり、
宮本常一の著書を読んでから改めて読むとまた新たな視点で読むことが
出来ました。

一部文章を抜粋-----
性ですら、今はどちらかと言えば個人的な娯楽みたいな、楽しみみたいな、
そういう方向に堕落しすぎとる傾向があると思うな。・・・省略
・・・「金がありゃいいんだ」という今の生き方は、その人が生を、平均寿命
以上をより良く全うしようという手段でしょ。そういう個人的なことばっかり
考えてちゃいかんのですよ。・・・省略・・・
子どもを産み育てるということがもっと人間にとって楽しく、生きがいのある
ものになれば、金があればいいんだという意識になりにくいと思うよ。
古代の文化はみーんなそれだよ。子どもが一番の宝。今みたいな金が一番の
文化は、近現代以前はまずないんじゃないですか。
-----

確かに現代人は「自分の人生をいかに長く、安心して、楽しく生きるか」
というのが大きなテーマになっています。でも昔の日本人から感じるのは、
「限られた人生を懸命に生きる姿」や「人間の生の濃密さ」です。
動物はずっとそうですが、人間もわりと最近までは「生」=「性」
だったことがこの2冊を読んで分かりました。

また長くなってしまいましたが、昔の日本人の感性は手仕事のものたちと
同じようにその多くが失われてしまいました。
それでもその中から未来を明るくする要素を見つけ、生きるヒントに
していければ、かつて日本人の中に存在していたおおらかな自然の心を
取り戻せるのではないかと思います。

慣れてしまうと気付かない、自分の国のこと。
これからも日本について触れていきます。

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